もう20年近くも前のこと、地方の高校から東京・神宮球場近くの高校に転校してきて、青山の街も人もキラキラ輝いて見えたものでした。
カバンやコート、靴まで決められて田舎の女子高に自転車で通っていた生活は大きく変わりました。制服なし(あるのは「標準服」で、着る・着ないは自由)で規則の少ない自由な高校、通学は満員の地下鉄、高校の近くには3車線の青山通りがドーンと通っていて大きなビルが立ち並び(今考えればさほど大きくもないのかも)、校門を出て10分弱のところにはその頃行列が出来るほど人気だった「ハーゲンダッツ」1号店(1号店だったことは、ずっと後になって知りましたが)、アイスクリームのスウェーセンズ。体育の授業で神宮前に行くと、SB所属のマラソン選手が同じ場所で練習していて、瀬古選手がすごい速さで私たちを追い越していくことがよくありました。高校の家庭科の調理授業の材料買出しは青山通り沿いのちょっとお洒落なスーパー「ピーコック」で。下校時に少し足を伸ばせば明治神宮や表参道、原宿にも行けて、友達とのお決まりの溜まり場は渋谷の銀座線から見える喫茶店でした。クラスでの文化祭の打ち上げも、おしゃれなレストランを利用していて、そんなことも田舎者の私にはちょっとしたカルチャーショックでした。
いきなりそういう生活になり、田舎者にはちょっとしんどい感じもしたのですが、そんな中、表参道の同潤会アパート付近はホッとできる場所だった気がします。夏には背の高い並木が緑豊かに茂っっていました。ツタの絡まった古いアパートには、お洒落なお店がたくさん入っていましたが、建物とうまく調和していて、落ち着いた感じがとても素敵でした。

出来るとは聞いていましたが、ついに「表参道ヒルズ」なるものが完成したようで、もう私の好きなあの表参道はないんだなあ、としみじみ。歳を取るというのはこういうことの積み重ねなのかな、と思ったりもします。見てみたいような、見たくないような。